満員の観客のうち、8割方が60代のおばさま方である。
おそるべしオマー・シャリフ。
映画的にはこれといって特筆すべきことはない。手持ちのカメラも脚本も、ユダヤ人少年とトルコ商人との少しばかり宗教的な差異を絡めた背景も、ぱっとしない。イザベル・アジャーニが端役で出演していたのには本当にびっくりしたし、その時のオマー・シャリフ(イブラヒムおじさん)の公私混同気味の嬉しがりぶりが微笑ましかったりもしたけど。
後半、イブラヒムが新車を手に入れてからのテンポがよくなり、カメラが固定されることが多くなって物語に自然な広がりが感じられるようになる。或いはフランソワ・デュペイロン監督はそれを意図してやったのかもしれない。土着性に満ちたトルコの風景がすばらしい。