April 24, 2005

『タッチ・オブ・スパイス』

乳房を含んでくれない赤ん坊のために、母親は乳房に砂糖をまぶす。
冒頭のそんなシーンがこの映画のすべてを語っているような気がする。

料理にはいろんな隠し味がある。主人公ファニスの祖父は、一番大切なのは(目に見えない)塩のさじ加減だ、と諭す。祖父は人生においても然り、と言っているのだろうけど、この、塩、というのが何なのか、僕には分からない。多分、気付いていないだけなのかもしれないが。例えば黒胡椒とかマサラとかシナモンだとかばかり追っかけているような気がしないでもない(笑) サフラン、とかね。
それはそれでいいだろう。知らないことを知って吸収しようとすることは、罪ではない。いつか「塩」が何なのか気付いたとき、後悔とかネガティヴなものを抱えることになるのかもしれないが、何をするにしたって、代償はつきものだろう。
地道に塩だけをきっちり効かして生きていくだけでは多分、豊饒はないと思うし。

ギリシャ映画には疎い。っつうか、アンゲロプロスの作品しか知らない。本国では『タイタニック』に次ぐ興行成績を収めたとかで、日本でいう山田洋次映画的なステイタスを持つ作品か。ちょっと違うような気もするが(笑)
題材的にデンマーク映画の『バベットの晩餐会』的なものを予想していたのだけど、見事に裏切られました。もろに『ニューシネマ・パラダイス』ではないですか。

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この記事へのコメント
TBありがとうございました。
ホント、ニューシネマパラダイスでしたよね。
老人と子供の友情。
子供は故郷を離れ、青年になり、老人の死をきっかけに帰る。
あんなに食事前のベルの音に幸せをジャマされたら、逆に食事をするのがこわくなりそう(^_^;)
Posted by yukika at April 25, 2005 17:01
>yukikaさま
ほんと、今度はいつの食事前にベルがなるのだろうかと、びくびくしてしまいますよね。
Posted by kiku at April 25, 2005 22:40
初めまして!トラックバックありがとうございます。

ギリシャとトルコの関係は全然知らないまま見ましたが、それでも別の要素で引き込まれる映画でしたね。塩加減、お料理においても人生においても、なかなか難しいですよね。

話は逸れますが、レッズがお好きなのですね。blogの背景が赤いのもレッズ色だからでしょうか?わたしはマリノス派です。
Posted by 直子 at April 25, 2005 23:39
>直子さま
ギリシャ-トルコの緊張関係があったからこその、サウナシーンでしたね。
こういう文化はいいですよねー。
Posted by kiku at April 26, 2005 08:27
こんばんは。
コメントありがとうございました。

食卓シーンが印象的な映画や、料理にまつわる映画は多いですね。「食べる」という仕種は、色々な行為を想像させるから(?)
「塩」が何なのか。
深いな〜。甘いケーキに塩を一つまみ入れると、深い味になったりします。しょっぱいばかりは嫌だけど、塩は何をするにも必要なスパイスなのかもしれませんね。
Posted by Ako at January 31, 2006 01:18