October 19, 2004

『ヘルタースケルター』岡崎京子。

先日遅ればせながら、手塚治虫文化賞漫画大賞受賞した岡崎京子の『ヘルタースケルター』を買って読みました。96年の交通事故の直前に連載終了していた作品で、加筆修正できていなかったものを、リハビリ中の彼女の許可と修正を経て単行本化した作品。確か『UNTITLED』のときもそうだったと思うのですが、ここでも安野モヨコが修正に加わったのではないのでしょうか。

個人的には、岡崎のマスターピースは『UNTITLED』(中編集)の中の『万事快調』だと感じています。『PINK』『ジオラマボーイ パノラマガール』『くちびるから散弾銃』の頃(多分漫画家としてのピークだった時期)の軽快さと、同時代を描くことの楽しさのようなものにたいする鎮魂歌めいた送辞がここにはあります。
あるいは80年代への愛情と肯定。メッセージを排除した、淡々と日常を描くことの徹底。殺伐とした90年代を象徴する『リバースエッジ』の直前に描かれた作品だということを考えれば、彼女の80年代を描くことへのこだわり、漫画家であることの理由付けが見えてくるような気がします。
むしろそれがモチベーションだったのでしょうか?

『ヘルタースケルター』には産みの苦しみを感じます。元々コマ割り、というか展開を楽しめるタイプの漫画家ではありません(時々見開きで伝えるカタルシスに感銘を受けることはあるけれど)が、そのあたりでかなり考えたなという印象を受けます。「きれいになること」への欲望は逆に存在のグロテスクさを照射します。それはいつの時代でもいろんな媒体で取り上げられてきたテーマであり(『シンデレラ』、桐野夏生の『グロテスク』、『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンもそうだと思います)、作家としては案外取っつきやすいモチーフなのかもしれません。読者の興味も惹きやすいし。
そういうテーマにおいて岡崎は何をどう差異化してみせようとしたのでしょうか。またそういう形で90年代を解体することで改めて何を提示しようとしたのでしょうか。
それが彼女が完全復帰した折りにぜひ知りたいことのひとつです。

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この記事へのコメント
ご来訪、コメントありがとうござます
岡崎さん、復帰は大変でしょうねえ。。

休むとカンが働かない、手が動かない、に、なります
一ヶ月でも休むと体が硬くなります
貧乏性のためでしょうか(笑)
私自身が病気で右腕を使えなくなり半年休んだ後、
治療してペンを使えるようになるのに2年以上かかり
まだ充分とは言えません
栄養不良で爪が変形したままで、痛みます
原作で復帰、ということならありうると思います
私もご回復と現役復帰を願っています
Posted by 管理人S at October 20, 2004 13:32
http://umezz.com/works/

『ヘルタースケルター』を読んで、楳図かずおの『洗礼』を思い出しました。
Posted by kkk at October 20, 2004 15:37