November 14, 2004

『白いカラス』

ロバート・ベントン、ニコール・キッドマン、アンソニー・ホプキンス、ゲイリー・シニーズ、エド・ハリス。

フィッリプ・ロス原作。この映画公開に合わせて原作 "The Human Stain" の翻訳も出ていたのですね。どこまで原作に忠実に作られているのかわかりませんが、これは読んでみたい。

黒人の両親の間に生まれながら白人と変わらない肌の白さを持つ青年は自分がユダヤ人だという嘘を重ねる。自分が本当は黒人であることを伝えることなく婚約者を親に会わせ、ショックに打ちひしがれる彼女を見て、嘘を突き通そうと彼は決意するのだ。彼女の受けたショックとは彼が嘘をついていた、あるいは故意に黙っていたからではなく、明らかに彼が本当は黒人なんだと知ったことからくる。彼も、「黒人であるという現実」の意味をそこで本当に知ることになり、白人といつわり、海軍に入る。
大学教授として社会的な地位を築いた後で、生徒にたいする些細な一言が引き金となり、彼は人種差別主義者として糾弾され、その心労で妻に死なれ(この妻には自分の両親は死んだということにしていた)、何もかも失うことになる。当然、自分の本当の出生が明らかになるから、子供は作っていない。
そして出会った女は、過去に義父に性的虐待を受け、自分の過失により火事で子を失い、ベトナム帰りの夫からもDVを受け続けて逃避行している女だった。
つまりは、傷を負うもの同士の恋愛。

元大学教授の場合は自らの「嘘」に始まっているからある意味自業自得のなれの果てなのだろうけど、遺伝子異常さえなければ少なくとも嘘を突き通す人生をいくことなどなかったろう。「ベトナム」の傷を負った元夫さえいなければ女は自分の子供を「殺した」罪に苛まれることなどなかったろう。元大学教授に言わせれば「これは最後の恋だ」というふたりの性愛はだからこそ深いし、一生を賭して突き通すはずだった嘘を溶解させるほど自分に優しくなることもできるのだろうか。

アメリカという病を彼らは象徴している。
それはフィリップ・ロスの生涯のテーマだ。

ロスの小説における常連、ユダヤ人「ザッカーマン」はこの作品にも出てくる。演じるゲイリー・シニーズがもう、なんといっていいのやら、いいんです(笑) 

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「白いカラス」(ロバート・ベントン監督、レンタルDVD) (ネタバレしないよう
「白いカラス」【中空庭園】at June 15, 2005 00:03